誰も知らない。誰も見た事がない。だけど確かに存在する。キヌズBAR、キヌの日々。


机の片隅の、微かな恋。


今、Dragon Ashのファーストアルバム「Mustang!」を聴いている。

最近ほとんど音楽なんか聴いていなかったんだけど、急に聴きたくなってitunesストアからダウンロードした。

高校生の頃は、このアルバムかHIDEのセカンドアルバム「PSYENCE」ばかり聴いていたように記憶している。


Mastang!の9曲目 siva に差し掛かった頃に突然、高校一年の頃の記憶が蘇ってきたので、また懲りずもせずにこうしてパソコンの前に座っている。


僕は確か1年9組だったんだけど、何かの(なんの科目だったかは覚えていない)授業を受けるときだけは10組の教室に移動をして授業を受けていた。その移動先の教室の席は固定されてて、僕は何かの授業を受けるときはずっと同じ席に座っていた。

その席は、10組の静かそうな女の子の席だった。

その女の子の情報はそれだけだ。


そう、静かそうな女の子だった。


何せ当時の僕は、今よりも人見知りが激しく、知らない人がいる前ではまともに喋ることすら出来なかった。(周りからみるとただ不機嫌な奴として写っていたのだろうと思う。)

ましてや相手は女の子。それ以上の情報を知る術を僕は知らなかった。


移動先の授業中僕は何もすることがなかったので、(授業中なのだからノートを書いたり本を開いたり色々することがあるだろう。と思う人もいるかもしれないが、実は僕はノートを書いたことがない。それどころか小学校高学年からは宿題も出したことがない。当時の僕には全く意味のないことに感じられたからだ。)机の端っこに siva の歌詞の一部分を落書きした。静かそうな女の子なので、落書きをしても文句は言ってこないだろう。と思ったからだ。


トカゲの王はこう叫ぶ


とだけ書いて授業を終えた。


その後、廊下ですれ違ったけどなんの反応もなかったので僕はホッとした。内心やりすぎたかな。とビクビクしてたからだ。


そして、数日後またその何かの授業を受ける為に10組に移動し、いつもの席に座った。

この日もすることがなかったので、また落書きをしようと思い机の端っこを見てみたら、驚いた。

続きの歌詞が書かれていた。


体の中の偽善を除去しよう


その下に、すごく控えめに

「siva この曲好きなん?私も好きやねん。」

と書かれていた。


この日から、誰も気がつかないような、机の端っこで、小さな文字で、ほんのすこしの間やりとりが始まった。


「うん。好き。このアルバムが一番いいよな。」


「うん。このアルバムが一番好き。最近めっちゃ流行ってるみたいやけど、この頃の曲が一番いい。」


「そうやんな。俺も同感やわ。」


廊下ですれ違うときはお互いにそしらぬ顔をしていた。


「学校、楽しい?」


「いいや、俺はおもんない。全く。」



それが最後のやりとりとなった。


僕はそのころから少しずつ吃り始め、少しづつ人付き合いを避けていった。

そして学校を辞めた。



突然思い出した、高校の頃の記憶。

名前も知らない、顔も覚えていない、静かそうな女の子。


今どこで何をしているのだろうか?



(このタイトルは恥ずかしいな。まあいいや。)








キヌズBAR日記

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