僕はあの時、あいつの握手を拒否した。
僕はいまでもそんなに性格は良くないけど、子どもの頃はもっと性格が悪かった。
小学生の頃、他のクラスに嫌いな奴がいると、休み時間にわざわざそいつのクラスに出向き、「なあ、俺、お前の事がなんでか知らんけど大嫌いなんだ。ビンタしていい?」と聞きにいくようなバカだった。
その子が返答する間も与えずに、とりあえずビンタをして自分のクラスに帰ってくるくらいバカだった。
今なら大問題になってると思うけど、当時は別に何も、誰にも咎められなかった。
(いや、問題になっていたのかもしれないけど覚えていない。)
一個くらい前か、二個くらい前の記事で 嫌いな先生 と 絵 の話をしたと思うんだけど、それを書いたあとに、一つのエピソードを思い出したので、ここに書いとく。
それは確か小学3年生の時だったと思う。
クラスにとても顔が良くて、頭も良くて、スポーツもできて、性格も良く、女の子からも男の子からも好かれてたK君という子がいた。
そのK君が、休み時間に何かの拍子で僕の足を踏んだ。
K君はその事に気づいていない様子で、謝らなかった。
僕はその事に腹を立て、K君の胸ぐらを掴み、急に顔を殴った。
「何?僕が何かした?」
K君が言った。
「俺の足を踏んだのに、謝らなかった。」
僕は、そう返答した。
「ごめん。でも殴らなくてもいいよね?でもごめんね。」
やさしいK君は、僕に殴られたのにもかかわらず謝ってくれた。
ここまでは良かった。(良いのかどうかはわからないけど。)
そのやりとりを、クラスのガキ大将的な存在のIが見てた。
僕はIが大嫌いだった。その理由は、Iには少し年上の兄貴がいて、校内ではヤンチャで有名だった。Iはその兄貴を盾にいつもでかい態度を取っていた。その態度が気に食わなかったので、何かにつけて僕はIに突っかかってた。
そのたびに、「お前、俺の兄貴を知らんのか?言いつけてやるからな。ただですむと思うなよ。」と言ってきた。
その発言も、非常に気にくわなかったので
「お前、兄貴がいないと何もできんのか?夜トイレにいく時も兄貴についてきてもらってるんか?」と挑発してた。(そんな僕は、夜トイレにいく時、いつもおばあちゃんについてきてもらってた。これはここだけの話にしといて欲しい。)
えっと、なんの話だっけ?
そうそう、僕がK君を殴ったのを、Iが見てたって話だった。
K君は、誰とでも仲が良かったので、Iとも仲が良かった。Iがイラついてるのがなんとなく見えた。
次の日から、クラスの誰も口をきいてくれなくなった。
どうやらIが、取り巻きの金魚の糞に「あいつとは口を聞くな。」と言う指示を出したらしかった。
そして、その金魚の糞どもがさらにその指示を周りに広めた。
で、誰も口を聞いてくれなくなったってわけだ。(結局、そのやさしいK君がそこに至るまでの経緯をこっそりと教えてくれた。)
まあ、僕が悪いんだけど。
僕は授業も嫌いだったし、しゃべる人もいなくなったので、暇つぶしにずっと絵を描いてた。
想像上の動物、想像上の山、僕の頭の中で「こんな生き物がいたらいいのに。こんな場所があったら良いのに。」という絵を描いてた。毎日毎日。
時折、大嫌いなIが僕の席にやってきて、1分くらいじっと僕の絵を眺めていた。
ある日、国語の授業で先生が「ガリバー旅行記に出てくるガリバーを、みんなの想像した通りに描いてみましょう。」と言った。
僕は、僕の想像するガリバーを黙々と描いた。他のクラスメイトはあれやこれやと騒ぎながら描いていたのだけれど、僕には話相手がいなかったので、只、黙々とガリバーを描き続けた。
絵が完成した頃、Iがまたいつものように僕の席まできて、僕の絵をじっと見つめていた。
そしてこう言った。
「俺、お前のことはこのクラスで一番嫌いだけど、お前の絵はこのクラスの誰の絵よりも好きなんだよな。」
続けてこう言った。
「どうしようかな。お前と仲良くしてやろうかな。友達の証として握手でもするか?」と言って右手を差し出してきた。
その態度が気に食わなかったので僕はこう答えた。
「絵を褒めてくれてありがとう。でも俺はお前の事が嫌いだからいいや。それに俺は左利きだ。まともな 目 をもった奴なら、俺が左手で絵を描いてる事に気がつくだろう?そんな事にも気がつかない奴と仲良くなりたくない。」
と言って、握手を拒否した。
馬鹿だろう?素直に右手を出していればいいものを。
もし今の僕のまま、あの時に戻れたら、僕は黙って右手を出していたのだろうか?
さっきからずっと考えているけど、結局答えが出ない。
でも、おそらく、出してないような気がする。
眠いから寝る。おやすみ。
(これは作り話だから信用するなよ。)
8コメント
2016.05.23 12:58
2016.05.22 03:59
2016.05.21 04:50